『給与明細は謎だらけ』で天引きと超過累進税率を学ぶ。10記事目の番外編 ※要約シリーズではありません。

資産・ファイナンス

本記事の目的

本日は、三木  義一氏著書『給与明細は謎だらけ』をご紹介します。

三木氏は税法を専門にしており、税金にかかわる著書を多く刊行されております。

本書では、給与明細を「手取額だけ確認し廃棄(今は、Webですが)」する私でも、「天引きの謎」が理解できるよう解説してくれてます。

 

天引きされているのは「保険料」でした。

「社会保険料」を支払っているので当たり前ですが。

生命保険とか、養老保険とか、民間の保険だと万一の時の「保険」の認知があります。

 

しかし、「社会」保険となると、納税の義務としての認知が強く保険料を支払っている意識が薄かったのです。

皆さんはどうでしょうか?

 

天引きの謎、超過累進税率の謎について解き明かしていきたいと思います。

 

それでは、内容の解説をしてまいります。

天引きは5つの単語で理解できる

投資を始めるにあたり、支出について理解を深めるために本書を読了しました。
※投資に関係する「新NISA」の記事はこちら、「投資額を決める」の記事はこちら

自分のお金が、どのような計算式で「天引き」されているのか、順序立てて説明してくれます。

 

天引きの謎を解くカギは5つの単語でした。

  1. 所得税
  2. 健康保険
  3. 厚生年金
  4. 介護保険
  5. 住民税

私が、サラリーマンの方が、目を向けない給与明細の項目ですね。

給与所得控除とその他控除

所得税の計算式があります。

所得税=①総収入ー②給与所得控除ー③その他控除×④所得税率です。

①総収入はいわゆる年収のこと。

以降では、②~③について学んでいきましょう

②給与所得控除
③その他控除
④所得税率まで

所得税は、個人の「租税」できる所得=「課税所得」を導き出して所得税率を掛ける考え方です。

課税所得を知ることで、所得税が分かります。

②給与所得控除

所得税=①総収入ー②給与所得控除ー③その他控除×④所得税率

サラリーマンには、原則必要経費が認められてません。

そこで給与所得控除が登場します。

 

自営業者や、事業者であれば売上から必要経費を引いて利益を計算する。

イメージができると思います。

 

サラリーマンについては必要経費は認められてません。

実際には消耗品のスーツ、カバン、靴、文房具や新聞、昼食、etc

これらは必要経費ともいえます。

しかし個別に計算できない。

 

そこで代替えとして給与所得控除が認められてます。

給与所得控除額は給与収入額毎の計算式で求めます

以下に国税庁のリンクを張ります。計算式を参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm

 

私は収入金額×10%+1,100,000円でした。

 

給与所得控除は個人の収入ごとに決められた必要経費だったのです。

③その他控除

所得税=①総収入ー②給与所得控除ー③その他控除×④所得税率

その他控除は4つあります。

  1. 健康保険料
  2. 厚生年金保険料
  3. 雇用保険料
  4. 介護保険料

それぞれ、理解していきましょう

健康保険料

健康保険は、医療機関で治療を受ける際医療費の負担軽減をしてくれます。

日本は「国民皆保険」。1961年に制定。国民みんなが保険に加入してます。

健康保険の基礎知識

医療費の自己負担は原則3割です。

自己負担限度額は約10万円程度です。

※収入水準で自己負担限度額は変わります
※参考資料:厚労省
「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

その他に、業務外の病気やケガによる休業などの場合1年6ヵ月の期間で傷病手当金の給付が受けられます。

健康保険料の計算式

1 給与の場合

計算式:「標準報酬月額」×健康保険料率÷2

・標準報酬月額=4~6月の総支給額平均
・健康保険料率(東京都)=9.84%

2 賞与の場合

計算式:「標準賞与額」×健康保険料率÷2

・標準賞与額=賞与総支給額平均

 

こうして、日本国民は皆、保険に加入しているのです。

ちなみに、アメリカでは2500万人程度が医療保険に加入できていないそうです。

厚生年金保険料

所得税=①総収入ー②給与所得控除ー③その他控除×④所得税率

その他控除の4つ

  1. 健康保険料
  2. 厚生年金保険料
  3. 雇用保険料
  4. 介護保険料
厚生年金保険料の基礎知識

1 障害年金

a,b,cの条件を満たした際に受給できます。

  • 病気、ケガによって生活が制限
  • 1年6ヵ月経っても働けない
  • 初診日を証明できる

2 遺族年金

  •   厚生年金加入者が死亡
  • 生計維持関係の遺族に支給
  • ①遺族基礎年金
  • ②遺族厚生年金

※会社員は①+②が給付されます。

3 老齢年金

最もよく知っている「年金」「65歳」で受給が可。

厚生年金保険料の計算式

1 給与の場合

計算式:標準報酬月額×厚生年金保険料率÷2

・標準報酬月額=4~6月の総支給額平均
・健康保険料率=18.3%

2 賞与の場合

計算式:標準賞与額×厚生年金保険料率÷2

・標準賞与額=賞与総支給額平均

雇用保険料

所得税=①総収入ー②給与所得控除ー③その他控除×④所得税率

その他控除の4つ

  1. 健康保険料
  2. 厚生年金保険料
  3. 雇用保険料
  4. 介護保険料

もし、失業してしまったら、
もし、休業しなくてはいけなくなったら、

補助してくれる雇用保険です。
※以下の説明以外に、教育訓練給付金もあるのですが、令和7年で廃止されるとのことで説明は割愛してます。

雇用保険料の基礎知識

1 失業給付

雇用保険の被保険者が、失業した場合に給付され、就職先を見つけるまでの補助です。
給付日数は、年齢、被保険者であった年数、再就職の難易度などが考慮されます。

受給条件

  • 働く意思と能力があるが職業に就くことができない状態
  • 離職日の前2年の間で、被保険者期間が通算で12か月以上ある

2 就業手当、再就職手当

失業手当を受給している人が、次の職業に就いたときに受け取れる手当てです。

受給条件

  • 就業手当:契約期間が1年未満の非正規雇用契約が決まった時
  • 再就職手当:契約期間が1年以上の雇用契約が決まった時

3 育児・介護給付金

(1)育児給付金

育児のために休業した場合に受け取れる手当です。

受給条件

  • 1歳未満の子を養育するために、育児休暇を取得している
  • 休暇を取得した前2年の間で、被保険者期間が通算で12か月ある。

(2)介護給付金

対象家族の介護をするために休業した場合に受け取れる手当です。

受給条件

  • 配偶者、父母等の対象家族の介護の為に休暇を取得している
  • 休暇を取得した前2年の間で、被保険者期間が通算で12か月ある。
雇用保険料の計算式

https://www.mhlw.go.jp/content/001211914.pdf

引用:令和6年度の雇用保険料率について(厚生労働省)

計算式を学ぶにあたり、知っておきたいのが「事業の種類」によって保険料率が異なるということ。

詳細はリンク先PDFを参照してください。

私は、会社員ですので、3/1000が料率となります。

計算式雇用保険料=賃金の総額×3/1,000

 

介護保険料

所得税=①総収入ー②給与所得控除ー③その他控除×④所得税率

その他控除は4つあります。

  1. 健康保険料
  2. 厚生年金保険料
  3. 雇用保険料
  4. 介護保険料

超高齢化社会の日本。現役世代の我々にとっても介護リスクは関係のある話しです。

実際、私も父親が要介護の認定を受けており、母親が存命の時期は両親ともに要介護の状況もありました。

介護保険料の基礎知識

天引きによる負担は40歳からです。また、介護保険の適用については65歳から。
※加齢による特定疾病の場合は65歳以前から

要介護度に応じて利用できる上限額(支給限度額)が定められています。

限度額のなかでサービスを利用すれば、

利用者の負担は原則1割になります。

一定以上の所得がある場合は2割、

現役並みの所得がある場合は3割、

になります。

介護保険料の計算式

1 給与の場合

計算式:標準報酬月額×介護保険料率÷2

・標準報酬月額=4~6月の総支給額平均
・健康保険料率=1.8%

2 賞与の場合

計算式:標準賞与額×介護保険料率÷2

・標準賞与額=賞与総支給額平均

④所得税率

所得税=①総収入ー②給与所得控除ー③その他控除×④所得税率

最後になります。所得税率を学びましょう

所得税率の基礎知識

税率は給与収入額毎に決められてます

以下に国税庁のリンクを張ります。
参照してください。

No.2260 所得税の税率|国税庁

私は20%になりました。

超過累進税率の謎

所得税率を理解するために、「超過累進税率」を知るひつようがあります。

例えば課税所得金額が695万円だった場合は、695万×23%ではありません

以下の場合を考えると分かります。

1 課税所得金額が694万円の時

所得税は138万8000円
694万×20%=138万8000円

手元に残るのは、555万2000円

2 課税所得金額が670万円の時

所得税は154万1000円
670万×23%=154万1000円

手元に残るのは、519万9000円

670万を稼いだ方の手取りが減ってしまう。

そこで「超過累進税率」がでてきます。

難しい説明は省きます。

以下が、所得税率速算式となります。

195万円以下:課税所得×5%

195万円越330万以下:課税所得×10%ー9万7500円

330万円越695万以下:課税所得×20%ー42万7500円

695万円越900万以下:課税所得×23%ー63万6000円

900万円越1800万以下:課税所得×33%ー153万6000円

1800万円越:課税所得×40%ー279万6000円

以上を覚えておきましょう。

社会保険の役割を知ろう

社会保険と民間保険の違いは何でしょうか?

民間保険は「私的なリスク」に備える。企業等によって運営されてます。

社会保険は「社会的なリスク」に備える。「強制加入」で、国、自治体、組合等で運営されてます。

「社会的なリスク」とは?

 

例えば、

医療費を払えず治療を受けない人々が増える、

引退後に無収入なら生活困窮者が増える、

失業して生活費にも事欠くと仕事探しも難しい、

仕事での死亡・負傷に何の補償もない、

社会全体が不安で不安定に陥るリスクです。これらが「社会的リスク」です。

社会的リスクから国民を守る制度です。

 

一方で、厚生年金は、国民年金の赤字を補填する為に折半という形をとって企業に支払わせている。

などの税制批判は尽きません。

 

結論は、頭の良い方々にお任せします。

 

私は、社会保険料の支払いを避けられないのであれば、いざという時に、きちんと利用させてもらいます。

万一の時は、国のセーフティネットを最大限利用する。

だから、固定費の節約の為に民間の保険を解約しました。
※固定費見直しに関する過去の記事はこちら

 

本書で、「国の制度を学び」「固定費を見直す」など検討してはいかがでしょうか。

 

~ 了 ~

 

給与明細の天引きを学びたい方は、是非、本書をお読みください

給与明細は謎だらけ~サラリーマンのための所得税入門~三木 義一 (著)

プライム会員なら無料で読める。無料体験でお読みください。

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P.S

~本稿で出てきた単語と、源泉徴収票内の単語の違いについて~

①給与収入
→ 源泉徴収票内の「支払金額」
⑤給与所得
→ 源泉徴収票内の
「給与所得控除後の金額(調整控除後)」

著者 三木 義一氏とは

法学者

青山学院大学名誉教授

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